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「伝えたい」より「伝わる」を。
空回りした新人時代から学んだ、小林翔太トレーナーの指導

小林 翔太
eviGym 六本木店店長/トレーナー 小林 翔太

小学校から高校まで、約10年間野球に打ち込んできました。一方で、サッカーやバスケットボールなど、状況に合わせて動く競技は苦手だったと話します。トレーナーになってからは、お客様に説明が伝わらず悩んだ経験も。今は、その日の表情や疲労度を見ながら、一人ひとりに合う種目と言葉を探すことを大切にしています。
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野球一筋の少年時代。それでも、得意ではない運動があった

――子どもの頃は、どのように運動と関わっていましたか?

小林:小学校から高校まで、9~10年ほど野球をしていました。父が野球をしていて、その姿を見ているうちに、僕も自然と始めたんです。
野球はずっと好きでした。チームの練習が終わって家に帰ってからも、バットを振ったり、走ったりしていました。休みの日には友達を誘って野球をすることもあれば、一人で練習することもありましたね。

――野球以外のスポーツも得意だったのでしょうか?

小林:いえ、意外と得意ではなかったです。サッカーやバスケットボールは、特に苦手でした。
野球は、投げる、打つといった動きがある程度決まっています。僕にとっては、それが安心して取り組める理由だったんです。一方で、サッカーやバスケットボールは、試合中に相手や周囲の動きに合わせて判断しなければなりません。その場に応じて柔軟に動くのが、当時はうまくできませんでした。
同じ球技でも、僕にはずいぶん違うものでしたね。

――当時の小林トレーナーは、どんなタイプでしたか?

小林:ひたすら練習するタイプでした。小学校と中学校ではクラブチームに入っていましたし、中学では野球のために走ることも大切だと考えて、陸上部に入った時期もあります。
野球が好きだったので、練習が終わっても自分で何かしていました。周りから見ると、野球一筋だったと思います。

「やめたい」と泣いて話した夜。続けると決めるまで

――それほど好きな野球でも、やめたいと思ったことはありますか?

小林:何度もあります。一番強く思ったのは、中学から高校に上がるときです。
中学の練習がとても厳しかったので、高校ではさらに大変になると思っていました。「もう精神的にも身体的にも耐えられない」と感じて、親に泣きながら野球をやめたいと相談したんです。
父とは3時間くらい話しました。途中までは、絶対にやめるつもりでしたね。

――その後、続けようと思えたのはなぜですか?

小林:練習はつらかったのですが、野球そのものが嫌いになったわけではなかったんです。甲子園に行きたいという夢もありました。
父と話した後、もう一度自分の中で気持ちを整理して、「まずはやってみよう」と思いました。実際に高校へ進んでみると、想像していたほど練習がつらいわけではありませんでした。
大会では東京都のベスト8に入りました。ただ、中学では東京都で何度も優勝しているチームにいたので、当時の僕はベスト8という結果も、あまり大きなことだとは捉えていませんでした。

――野球を続けてきた経験は、今の仕事にもつながっていますか?

小林:つながっていると思います。野球をしていると、自分が次に何をすべきか、自分で考えなければいけない場面があります。
やめたいと思ったときも、目標に向けてどう気持ちを立て直すかを、自分の中で考えました。そうやって自分の行動や気持ちを整理してきた経験は、社会人になってからも生きていると思います。

分かりやすく教えてくれたトレーナーが、進路のきっかけに

――トレーナーを目指したきっかけを教えてください。

小林:高校の野球部でウェイトトレーニングをしていて、まずトレーニングそのものが好きになりました。
チームにはトレーナーがいて、マンツーマンで見てもらったり、いろいろなことを聞いたりする機会がありました。その方の説明が、とても分かりやすかったんです。
自分も将来、誰かのために運動を提供する仕事がしたいと思いました。野球に関わる仕事でなくてもいい。好きなトレーニングを通して人の役に立てるなら、頑張れそうだと感じたんです。高校2~3年生の頃には、トレーナーを目指すと決めていました。

――進路を伝えたとき、ご家族や友人はどのような反応でしたか?

小林:家族からは特に反対されず、「いいんじゃない」という反応でした。
高校の友人にもトレーナーを目指している人がいて、一緒に専門学校のオープンキャンパスへ行き、同じ学校に入学しました。一緒に頑張れる友人がいたことは、モチベーションにもなりましたね。

現場で戸惑ったのは、相手に合わせて伝えること

――専門学校で学んだ後、現場に出て感じたギャップはありましたか?

小林:一番大きかったのは、コミュニケーションです。
学校では友人にトレーニングを説明する練習をしていました。でも現場では、年齢も経験も違うお客様とお話しします。同じことを伝えるにしても、話題の選び方や言葉遣い、説明の仕方が人によって違う。「こんなに違うんだ」と最初は戸惑いました。

――その頃、参考にしていたトレーナーはいますか?

小林:室舘トレーナー(現在は退職)と、近くで働いていたイバラキトレーナーです。お二人のお客様との接し方を、よく参考にしていました。
ただ、言葉遣いや話し方は、その人が言えば自然でも、僕がそのまま真似すると違うことがあります。見て学んだことを自分の言葉に合わせながら、少しずつ対応できるようになりました。

自分の段取りで精いっぱいだった新人時代。今は、お客様の表情を見る

――デビュー直後、特に印象に残っているお客様はいますか?

小林:初めて担当したお客様です。初めてのお客様対応だったので、かなり緊張していました。
当時は「まず自分がテンションを上げなきゃ」と思って、勢いよく話していたんです。今でもそのお客様から、当時の僕の話し方について言われることがあります。
何か難しいことを聞かれて困ったというより、僕が一人で焦って、空回りしていましたね。

――今振り返ると、当時の指導で何が足りなかったと思いますか?

小林:お客様を見ることです。
「次は何を話そう」「次の種目をどう説明しよう」と、自分の段取りばかり考えていました。お客様がどんな表情をしているか、今どう感じているかを見る余裕がなかったんです。
トレーニングの主役はお客様なのに、当時の僕は、自分がやるべきことをこなすので精いっぱいでした。

――現在は、セッションの中で何を見ていますか?

小林:その日の疲労度や表情を見ます。そのうえで、どんな種目にするか、どう伝えるかを考えています。
同じ背中のトレーニングでも、猫背を気にしている方なら、単に「背中を鍛えましょう」と言うだけでは、何のために行うのか伝わりにくいかもしれません。その方が気にしていることと、今行う運動がどうつながるのかをお話しするようにしています。
お客様によって、前向きに取り組める言葉も違います。そこを考えるようになりました。

伝わらなかった説明を振り返り、その方に合う言葉を探す

――1年目には、指導がうまくいかなかったと感じることもありましたか?

小林:たくさんありました。会話が一問一答で終わってしまい、うまく話せなかったこともあります。
技術面でも、選んだメニューや説明がその方に合わず、お客様から「筋肉を使っている感覚がない」と言われたことがありました。お客様が求めていることに、十分応えられなかったと感じるセッションもありましたね。

――うまくいかなかった日は、どのように振り返っていましたか?

小林:最初は「今日、自分は何をしていたんだろう」と落ち込みました。説明が伝わらなかったときに、「運動が初めての方だから難しかったのかもしれない」と、相手側に理由を求めてしまうこともありました。
でも、数日たってからもそのセッションのことを考えていると、「あのとき、もっと分かりやすい言い方があったんじゃないか」と思うんです。
そこで終わらせず、次は別の説明をしてみよう、違う種目を提案してみようと考えるようになりました。反省して、試して、また改善する。その繰り返しです。

――説明の仕方を変えるとは、具体的にはどういうことですか?

小林:同じ動きでも、言葉を変えると伝わり方が変わります。
例えば片脚を使うトレーニングで、「お尻を引いて」と言うだけでは、動きがつかみにくい方もいます。そんなときは、「両手に持ったダンベルを床に置くように、身体を下ろしてみましょう」と伝えることがあります。
そのほうが自然に身体を動かせる場合もあるんです。ただ、この説明が誰にでも合うわけではありません。その方に伝わる言葉を探す必要があります。
種目についても同じです。人によって合う動きやフォームが違うので、一つの方法でうまくいかなければ、別の方法を考えます。そうした選択肢を増やしてきました。

――知識を伝えすぎてしまったこともありますか?

小林:あります。「これも伝えたい、あれも伝えたい」と思って、僕ばかり話してしまったことがあります。
お客様は継続して通ってくださるのに、一度のセッションで全部伝えようとする必要はなかったんですよね。たくさん説明しても、その日の運動に集中しづらくなってしまうことがあります。
今は自分の中で一つテーマを決めて、「今日はこれを伝えよう」「今日はこの動きをうまくできるようにしよう」と考えています。

指導に迷ったら、仲間の視点も借りて考える

――今でも、判断に迷うのはどのような場面ですか?

小林:腰まわりに痛みや不安のある方を担当するときは、今でも悩むことがあります。
ほかにも、トレーニングを続けているのに、思うように動きが変わらない場合があります。そういうときは、自分一人の考えだけで進めず、ほかのトレーナーに相談します。

――ほかのトレーナーに相談して、指導を変えた例を教えてください。

小林:片脚で行う種目が苦手で、身体が大きくぐらつくお客様がいました。下半身のトレーニングを続けても、なかなか変わらなかったんです。
そこで、藤原トレーナーや若山トレーナーと「どうしたらよいだろう」と話しました。お互いに意見を出し、スクワットに入る前の種目や、トレーニングの順番を見直して試してみたところ、その方にはうまくはまりました。

――eviGymでは、トレーナー同士で相談しながらお客様をサポートしています。経験年数の違うトレーナーと意見を出し合うことについて、どう感じていますか?

小林:僕自身、指導に迷ったときは、ほかのトレーナーに相談しています。先ほどの片脚で行う種目の例でも、藤原トレーナーや若山トレーナーと意見を出し合い、種目の順番を見直しました。
新卒か先輩かに関係なく、トレーニングに対するアイデアは一人ひとり違います。誰と話していても、「そういう考え方もあるんだ」と感じますね。
自分一人で考え続けるのではなく、ほかのトレーナーの視点も取り入れて、お客様に合う方法を探せる。そこは、eviGymでチームとしてお客様をサポートする良さだと思います。

支えきれなかった悔しさと、日常に運動が広がるうれしさ

――これまでに、特に悔しさが残ったお客様とのお別れはありますか?

小林:交通事故でけがをされ、運動を続けられなくなったお客様のことは覚えています。ご本人には運動を続けたい気持ちがあったのに、けがで通うことが難しくなってしまいました。
僕にもできることが限られていて、悔しかったです。僕自身の店舗異動も重なり、その後のやり取りも難しくなりました。もう少し何か伝えられたのではないか、と考えることはあります。

――トレーナーの仕事をしていて、うれしいのはどんなときですか?

小林:お客様から感謝の言葉をいただいたときは、やはりうれしいです。それに、通い始めた頃と比べて、表情や身体だけでなく、運動に対する考え方が変わる方もいます。
以前はあまり歩かなかった方が、自分から歩くようになって、「運動するとすっきりする」と話してくださることがあります。運動する機会が、ジムに来る時間以外にも増えているんです。
そうやって、お客様自身が身体を動かすよさを感じてくださると、トレーナーをしていてよかったと思います。

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