トレーナー紹介
eviGym TRAINERS 出勤店舗
| MON | TUE | WED | THU | FRI | SAT | SUN |
|---|---|---|---|---|---|---|
| – | 渋谷 | 銀座 | – | 銀座3rd |
新宿 |
新宿 マルイ本館 |

狩野 秀輔
【保有資格】
「伝える」だけでは、お客様には届かない。
狩野秀輔トレーナーが、失敗を通して見つけた“その人に合わせる”指導
小学生の頃からスピードスケートを続け、バスケットボールやバレーボールにも取り組んできた狩野トレーナー。
運動は、物心がついた頃から生活の一部でした。
一方、トレーナーとして現場に立ったばかりの頃は、自分にとっての「当たり前」と、お客様にとっての「当たり前」の大きな違いに戸惑ったといいます。
自分が正しいと思うことを伝えるだけでは、お客様に届かない。身体の状態だけを見ていても、その人が本当に求めているものは分からない。
狩野トレーナーは、現場での失敗やお客様の退会を経験しながら、指導の基準を少しずつ変えてきました。
現在、大切にしているのは「伝えること」ではなく「伝わること」。そして、お客様の目的や気持ちは変化するものだという前提に立ち、対話を続けることです。
狩野トレーナーの原点と、現在の指導に込めている思いを聞きました。
「やってみたい」が、いつも運動の始まりだった
――子どもの頃は、どのような運動をしていましたか?
小学校2年生から高校3年生まで、スピードスケートを続けていました。
それ以外にも、バスケットボールを中学校の3年間、バレーボールを小学校3年生から6年生までと、大学で2年間やっています。
一つの競技だけではなく、いろいろな競技に関わってきました。
――ご家族に勧められて始めたのでしょうか?
親に言われたというより、自分の「やってみたい」という気持ちが強かったですね。
むしろ親からは、「そこまでやるとは思っていなかった」と言われるくらいでした。
周囲にも運動をしている親戚はいましたが、その中でも僕が一番いろいろな競技をしていたと思います。
――運動が得意だった狩野トレーナーにも、苦手な競技はありましたか?
野球とサッカーは苦手です。
ほとんど経験してこなかったこともありますし、子どもの頃から、周りの人と同じことをするより、少し違うことをやってみたい気持ちがありました。
有名な選手に憧れて競技を始めたというよりは、競技そのものをやってみたかったんです。
厳しい練習の先で感じた、身体が変わる面白さ
――スピードスケートの練習は、冬だけではないのですか?
氷の上で練習できる時期は限られているので、それ以外の季節は陸上トレーニングが中心です。
走ったり、自転車で山を登ったりして、足腰や心肺機能を鍛えます。氷上練習が始まる2〜3か月前から、徐々にスケートに近い専門的な動きが増えていきます。
バスケットボールを始めたのも、スケートに生かせると思ったことがきっかけでした。
跳ぶ、走る、切り返すといったさまざまな動きがあり、体幹や足腰も鍛えられます。別の競技を経験することが、スケートの身体づくりにもつながっていました。
――練習がつらくて、やめたいと思ったことはありませんでしたか?
小学生の頃は、「寒い」「しんどい」「嫌だ」と感じることもありました。
ただ、中学生になる頃には、やめたいという感覚自体がなくなっていました。運動することが生活の一部になっていて、やらないと落ち着かないくらいだったんです。
きっかけが一日で訪れたというより、少しずつ変わっていった感覚です。
タイムが縮まったときの達成感や、自分の身体が変化していく感覚を知ったことで、つらさの先にある面白さを感じるようになりました。
だから今は、お客様に対しても、つらいことをただ我慢してもらうのではなく、小さくてもご本人が変化を実感できる瞬間をつくることが大切だと考えています。
高校最後の大会で燃え尽き、支える側の道へ
――競技を続けて、選手を目指す選択肢もあったのではないですか?
もちろん考えました。
ただ、高校3年生で最後のインターハイを終えたとき、燃え尽きたような状態になりました。
もう一度気持ちを入れ直そうとしましたが、以前のような熱量が戻ってこなかったんです。
同時に、自分の限界についても初めて現実的に考えました。
競技を続けるなら、日本一や世界一を目指すことになります。しかし、そこに到達できるのが何年後なのか、そもそも到達できるのかも分からない。
それを考えたとき、急に現実に引き戻されたような感覚がありました。
そこで、選手として続けるよりも、選手を支える側に回りたいと思うようになりました。
――そこから、すぐにパーソナルトレーナーを目指したのですか?
もともとは、アスリートを支えるトレーナーになりたいという思いが強く、リハビリなども含めて学ぶために理学療法の道へ進みました。
ただ、実際には、スポーツに直接関われる人は限られているという現実も知りました。
自分が望んでいた形でスポーツに関わり続けるには、別の方法を考える必要がある。そうして最終的にたどり着いたのが、パーソナルトレーナーという仕事でした。

「これくらいはできる」が通用しなかった
――トレーナーになる前に抱いていた理想と、現場に立ってからの現実にギャップはありましたか?
かなりありました。
最初は、アスリートに向けた指導をイメージしていた部分が強かったんです。
そのため、一般のお客様に合わせて負荷を調整したり、動きを選んだりすることが、うまくできませんでした。
当時は、自分の感覚を基準にして「これくらいは、みんなできるだろう」と考えてしまっていました。
でも、運動経験や身体の状態は人によってまったく違います。
特に印象に残っているのは、スクワットができないお客様に出会ったことです。
椅子に座る、立ち上がるという動作は日常生活で行っているはずなのに、「トレーニングとしてスクワットをしてください」と言われると、急に動けなくなる。
環境や意識が変わるだけで、普段できている動作ができなくなることに驚きました。
デビュー直後には、ぎっくり腰を経験している方を担当したこともあります。しゃがむことが難しく、ご本人の身体の感覚もうまく言葉にならない。
そのときに初めて、知識を持っているだけでは指導にならないと実感しました。
だから今は、「一般的にはできるはず」という前提を置かず、その方が今どこまで動けるのか、どのような言葉なら理解しやすいのかを確認するようにしています。
「伝える」から「伝わる」へ
――指導がうまくいかなかったと感じた経験はありますか?
あります。
自分ではきちんと説明したつもりでも、お客様の反応を見て、「今日は手応えがなかったな」と感じることがありました。
その経験から、意識を「伝える」から「伝わる」に変えました。
自分の感覚や、自分が分かりやすいと思う表現を使っても、すべてのお客様に伝わるわけではありません。
例えばスクワットで、「お尻をこのくらい引いてください」「この姿勢を保ってください」と正しい形を説明しても、動きのイメージが持てない方もいます。
その場合は、同じ説明を繰り返すのではなく、その方がこれまで経験してきたことや、普段の生活の中で想像しやすい動作に置き換えて伝えます。
身体の状態だけではなく、心理面や生活環境も含めて相手を理解し、言葉を選ぶことが必要です。
僕が言いたいことを言えたかではなく、お客様の中にイメージが生まれ、実際に動けたか。
だから今は、「正しい説明をしたか」よりも、「その方に伝わったか」を確認するようにしています。
正しさを優先し、お客様の目的を見失った
――知識や正しさを優先しすぎて、お客様の気持ちを置き去りにしてしまったことはありますか?
あります。
例えば、お客様から「今日は脚を中心にやりたい」と言われたとします。
身体の状態を見た結果、トレーナーとしては別の部位にも取り組んだ方がよいと判断することがあります。
もちろん、専門家として必要な提案をすることは大切です。
ただ、当時の僕は、正しいと思ったことを優先するあまり、お客様がなぜ脚を鍛えたいと思っているのか、どのような気持ちで来店しているのかを十分に確認できていませんでした。
結果として、お客様の要望とセッションの内容がずれてしまい、うまくはまらなかったことがあります。
後から振り返ると、必要なことを提案したのではなく、自分の正しさを押しつけてしまっていた部分があったと思います。
だから今は、身体の状態から必要なことを判断するだけでなく、「今日、何を求めているのか」「なぜそれをやりたいのか」を確認したうえで提案することを意識しています。
お客様の希望をそのまま受け入れるだけでも、自分の判断を押し通すだけでもありません。
両方をすり合わせ、納得できる選択肢を一緒につくることが、トレーナーの役割だと考えています。

一人で答えを出さず、他のトレーナーの視点を借りる
――指導に迷ったときは、どのように対応していましたか?
先輩や同期のトレーナーに相談していました。
ただ、「この場合は、どの種目をすればよいですか」と正解だけを聞くのではありません。
自分のやり方がお客様にはまらなかったのであれば、そのお客様にうまく対応できた人は、どのように考え、どのような言葉を使っていたのかを聞きます。
実際の指導を見に行ったり、本人に考え方を尋ねたりすることもありました。
同じ身体の状態でも、お客様によって伝わる言葉や受け入れやすい提案は異なります。
一人で考え続けるより、他のトレーナーの視点を借りることで、自分にはなかった選択肢が見えてきます。
だから今も、迷ったときに一人で結論を出さず、周囲に相談することを大切にしています。
悔しかった退会から学んだ「変化を聞き続けること」
――特に悔しかった、お客様の退会経験を教えてください。
お客様一人ひとりに合わせた設定がうまくできず、少しずつ来店頻度が下がり、最終的に退会につながってしまった経験があります。
退会理由を直接詳しく聞けたわけではないため、自分の分析や周囲から得た情報も含まれています。
ただ、振り返ったときに一番感じたのは、「もっと話すべきだった」ということです。
ここでいう会話は、ただ楽しく雑談をすることではありません。
お客様が今どのように感じているのか。最初に持っていた要望は今も同じなのか。通い続ける中で、新しい目的や悩みが生まれていないか。
人の気持ちや生活は変化します。
最初のカウンセリングで聞いた目標を、そのままずっと追い続ければよいわけではありません。
変化を確認せずに同じ提案を続けてしまえば、お客様が求めている時間とのずれが、少しずつ大きくなってしまいます。
当時、トレーナーとして必要な対話を重ね、そこで得た情報をもとに、筋力トレーニングやストレッチ、身体のケアを適切に提案できていたら、その方は運動を続けられたかもしれません。
だから今は、目標を一度聞いて終わりにせず、その日の状態や気持ち、生活の変化を継続的に確認するようにしています。
十人十色だから、トレーナーの仕事は面白い
――現在も、指導に迷うことはありますか?
あります。
提案の仕方については、今でも葛藤することがありますし、まだまだだと思う場面もあります。
お客様は十人十色です。
ある方に伝わった言葉が、別の方にも伝わるとは限りません。ある方に合ったメニューが、別の方にも合うとは限らない。
だから、提案の仕方には終わりがありません。
大変ではありますが、そこがこの仕事の面白さでもあると思っています。
一人ひとりを見ながら考え、試し、反応を確かめ、必要であれば提案を変える。
その積み重ねによって、お客様が運動を続けられる時間をつくっていくことができます。
もし、一人ひとりの違いに向き合えなくなり、自分のやり方だけを押し通すようになったら、そのときは現場を離れるときだと思っています。
運動経験ではなく、その人の現在地から始める
長年スポーツを続けてきた狩野トレーナーにとって、運動は自然に生活の中にあるものでした。
しかし、お客様にとっては、運動が不安や苦手意識を伴うものかもしれません。トレーナーには簡単に見える動きでも、お客様にとっては大きな挑戦になることがあります。
だから狩野トレーナーは、自分の基準で「できるはず」と判断しません。
まず、その方の身体、経験、生活、気持ちを知る。そして、自分が伝えたい言葉ではなく、その方に伝わる言葉を探す。
正しさを一方的に押しつけるのではなく、お客様の希望を聞きながら、専門家として必要な提案をする。
狩野トレーナーが目指しているのは、単に正しいフォームを教えることではありません。
お客様が自分の変化を感じ、「これなら続けられるかもしれない」と思える時間をつくることです。
競技者として身体の変化を楽しんできた経験と、トレーナーとして味わった失敗。その両方が、現在の狩野トレーナーの指導につながっています。

