トレーナー紹介
「できない」に向き合った経験が、
お客様に寄り添う力になった

eviGymトレーナー 高野 英治
――子どもの頃、体育や部活動ではどのようなタイプでしたか?
高野: 部活動ではバスケットボールをしていました。バスケはかなり好きで、周りからは「バスケバカ」と言われるくらいでしたね。
ただ、体育の種目を何でもこなせるタイプではありませんでした。特に苦手だったのは、マット運動や器械体操です。倒立や前転、後転、側転などは本当に嫌いでした。
野球のようなボールを投げる種目も得意ではなく、ハンドボール投げも苦手でした。運動神経がすごく良かったかと聞かれたら、決してそうではなかったと思います。
――バスケットボール以外の種目には、苦手意識があったのですね。
高野: そうですね。できないことが一番大きかったと思います。
倒立などは、自分の身体の特徴も関係していたのかもしれません。僕は腕が長いので、身体を支えるときに必要な力や動かす距離が、人より少し大きかったのではないかと思っています。
できないから楽しくない。楽しくないから、さらに苦手になる。そのような感覚でした。
一方で、100メートル走や走り幅跳び、持久走などは好きでした。速く走る、高く跳ぶといった、当時の自分でもあまり複雑に考えずにできる種目は楽しめていたんです。
――苦手だったマット運動は、今も苦手なのでしょうか?
高野: 実は、今は倒立ができるようになりました。
社会人になってからクロスフィットを始めたのですが、そこでは鉄棒を使った種目や、自分の体重を支える種目が出てきます。その中に倒立もあったので、やらざるを得なかったんです。
最初はまったくできませんでした。何度も転んで、身体もボロボロになりながら練習しました。それでも続けていくうちに、少しずつできるようになりました。
その経験から、「結局、やり込むことは強いんだな」と実感しました。
――初めて倒立ができたときは、どのような気持ちでしたか?
高野: できないことにきちんと向き合い、それができるようになるのは、すごくうれしいことだと思いました。
同時に、「人は年齢を重ねても成長できるんだ」と感じました。
脳には、経験や学習によって変化する性質があります。倒立でも、「この姿勢だと転ぶ」「この位置なら身体を支えられる」と、練習を重ねる中で脳が学習していくんです。
社会人になってからでも、身体も脳も新しいことを覚えられる。そのことを自分自身で実感できたのは、大きな自信になりました。
――運動を好きになる前の自分と、現在のお客様に重なる部分はありますか?
高野: 「情報迷子になっている」という点は、重なると思います。
今はインターネットで調べれば、トレーニングやダイエットに関する情報がいくらでも出てきます。ただ、情報が多いからこそ、何が正しいのか、何が自分に合っているのかが分からなくなることがあります。
僕自身も、いろいろ調べては情報に左右され、「この方法は本当に意味があるのかな」と疑問に思っていた時期がありました。自分に合う方法が分からないことが、運動への苦手意識につながっていた部分もあったと思います。
お客様の中にも、「正しいフォームが分からない」「自分は何をしたらいいのか分からない」と感じている方がいます。だからこそ、ただ運動を教えるのではなく、その方に合った方法を一緒に整理することが大切だと考えています。
――トレーナーという仕事を最初に意識したのは、いつですか?
高野: 高校2年生の冬です。
バスケットボールの大会で右足首を強く捻挫し、内出血するほどの怪我をしました。そのとき、チームに帯同していたトレーナーの方にサポートしてもらったんです。
身体の状態を見ながら、「こういうことをしたほうがいい」とアドバイスをもらい、一緒に回復を目指していきました。
それまでは、選手として競技をする側しか知りませんでした。しかし、その経験を通して、「こういう立場で人を支える仕事もあるんだ」と知りました。それが、トレーナーを意識した最初のきっかけです。
――周囲にトレーナーを目指すと伝えたとき、反応はいかがでしたか?
高野: 高校時代から筋力トレーニングをしていたので、家族や友人からは「好きそうだし、いいんじゃない」と自然に受け入れてもらえました。
高校で筋トレを始めたきっかけも、バスケットボールです。当たり負けすることが多く、身体を強くしたいと思っていました。
先輩たちが熱心に筋トレをしていたので、自分もベンチプレスに挑戦したのですが、初めてのときは重さに耐えられず、潰れてしまいました。それが悔しくて、負けたくないという気持ちで続けたんです。
続けていくと少しずつ胸板が厚くなり、自分の身体が変わっていきました。「トレーニングって面白い」と感じた経験の一つですね。
――デビュー直後に担当した方について、今でも覚えていることはありますか?
高野: 前職で、デビュー前の新人が社内の従業員へ無料でトレーニングを提供するキャンペーンがありました。
そのとき担当した同期が、僕を初めて指名してくれたんです。
自分が初めて提供したトレーニングを受けて、「またこの人にお願いしたい」と思ってもらえた。自分でも、誰かに選んでもらえることがあるんだと感じました。
うれしかったのと同時に、「これからも選んでもらえるように、もっと努力しなければいけない」と、トレーナーとしての覚悟が生まれた瞬間でもありました。
――「自分はトレーナーに向いていないかもしれない」と思ったことはありますか?
高野: 何度もあります。特に、自分はコミュニケーションが下手だと感じたときです。
前職では、お客様からLINEで食事の写真を送っていただき、食事指導をしていました。当時の僕は、「痩せるという目標があるなら、毎日の食事を送るのは当たり前」と思っていたんです。
しかし、お客様にとって、毎食の写真を撮って送ることは大きな負担です。それにもかかわらず、僕は送ってくださったこと自体にはほとんど触れず、「これはよくない」「ここを変えたほうがいい」と改善点ばかり伝えていました。
今振り返ると、まずは「きちんと記録できていますね」「送ってくださってありがとうございます」と、その方が行動したことを受け止めるべきでした。当時は、相手の気持ちを理解しようとするより、自分が正しいと思うことを一方的に伝えてしまっていたんです。
――知識として正しくても、相手の気持ちが置き去りになっていたのですね。
高野: そうですね。
正しいことを言えば、お客様のためになると思っていました。しかし、正しい内容であっても、相手が受け取れる状態でなければ意味がありません。
相手がどのくらい負担を感じているのか。何につまずいているのか。どのような言葉なら前向きに受け取れるのか。そこまで考えることが、トレーナーには必要なのだと学びました。
――eviGymに入ってから、お客様との接し方はどのように変わりましたか?
高野: お客様と対話する時間が増えたことが大きいです。
前職では、1回20分という短い時間でトレーニングを提供していました。限られた時間で進める必要があるため、どうしても種目を次々と行い、短時間で終わらせることが中心になっていました。
現在は60分の時間があるので、お客様のご要望を聞き、その背景をさらに掘り下げることができます。
「今日は何をしたいですか」と聞くだけではなく、なぜそう思っているのか、普段どのくらい運動しているのか、何をすると気分がよいのかまで話を聞くようになりました。
転職は、自分にとって大きな転機でした。お客様との向き合い方だけでなく、トレーナーに必要なことをきちんと学ぼうと意識が切り替わったのも、この頃です。
――お客様の反応を見て、「今日の指導はうまくいかなかった」と感じたことはありますか?
高野: 体験トレーニングでは、お客様の反応が分かりやすく表れることがあります。
ご入会に至らなかった場合、もちろん料金やタイミングなど、さまざまな理由があります。ただ、自分が十分な満足感を提供できなかった可能性もあるので、「どこがよくなかったのだろう」と振り返ります。
その経験から、その方の目的に合ったものを提供することを、より意識するようになりました。
例えば、「姿勢を改善したい」と話している方でも、実際には身体をたくさん動かしてストレスを発散したい場合があります。そのような方に、姿勢改善のための細かな動きだけを長く続けても、満足していただけないかもしれません。
姿勢へのアプローチを最初の一部に取り入れながら、しっかり身体を動かせるトレーニングも多めに行う。その方が求めている体験に合わせて、内容を調整するようになりました。
――今、同じようなお客様が来たら、最初に何を確認しますか?
高野: 普段の運動頻度と、本当の目的をより深く確認します。
表面的な言葉だけで判断せず、「なぜそれを改善したいのか」「運動をした後、どのような気持ちになりたいのか」まで聞くと思います。
同じ「姿勢改善」というご希望でも、痛みを減らしたい方、見た目を変えたい方、仕事中の疲れを軽くしたい方では、必要な内容が異なります。
最初にその部分を丁寧に理解することが、満足していただける時間につながると考えています。
――知識を優先しすぎてしまうことは、現在もありますか?
高野: 今でも、つい話しすぎてしまうことはあります。
自分が知っていることを、すべて説明したくなってしまうんです。しかし、運動の知識がほとんどない方に情報を一度に詰め込んでも、理解するのは難しいですよね。
話しながら、「少し説明しすぎているな」と気づいたら、一度黙るようにしています。そして、お客様が本当に聞きたいことに答える。エクササイズについても、「この動きは、こういう目的で行っています」と、そのときに必要な説明だけを加えるようにしています。
すべてを伝えることより、相手が今必要としていることを、受け取りやすい形で伝える。そのバランスは、今でも難しいと感じます。




